ある土曜日のできごと

土曜日にもかかわらず、すっきりと晴れわたった空にもかかわらず、あるいはここ数日前歯が痛むにもかかわらず、今日は仕事だった。

たいしたことをするわけではないが、それでもこんな日に丸一日パソコンをにらみつけているのは、まったくもってナンセンスだ。午後には同僚のCが気を利かしてクッキーをくれたが、歯が痛むわたしは泣く泣く遠慮した。それがまた憂鬱さに拍車をかけた。そういえば明日はこのNと丸一日デートなのだった。そんなことを考えるとたのしい気持ちになるものの、そこでもまた歯が痛むのかと思うと、かえっていっそう悲しい気持ちになった。

モヤモヤしたやり切れなさのまま夜を迎え、帰りがけに買い物でもしようと、わたしは駅に向かった。切れかかったシャンプーや歯ブラシのことを思い出せたことに安堵しながらドラッグストアに入ると、ちょうど友人SからのLINEが入った。しばらくぶり、忘年会でもどうだい、という話だった。店内ではクリスマスソングが流れている。

にわかにわたしの心は浮き立った。シャンプーの棚を何分もかけて歩きながら、なんとはなしに抑制のきいた、あっさりとした口調でOKと返信をした。なんて素敵な師走であることか。そういえば明日はデートだ。歯だって始終痛いわけじゃないし、そのくらいのほうがいくぶん冷静になれていいかもしれない。わたしは月末の土曜日、この澄みきった、夜道に明かりのきらめくこの土曜日を、すっかり好きになってしまった。